サロンのオープンに至る工程とともに、由貴さんが「好き」でたまらない世界観を紹介しています。数々の愛してやまないものたちの写真と、それにまつわるエッセイを思い入れたっぷりに綴っています。由貴さん独自のパリ案内も読みどころです!こんなお店があるのかという驚きのお店や日本ではあまり見かけない美味しそうな料理にも目が釘付けになります。
また、この本は細部にまで工夫を凝らした編集です。細かくはぜひ手にとって見てほしいのですが、表紙カバーはもちろん、それを外した時のカラー装丁の美しさ、見返しの帯をめくってみると、こんなところにあら(!)、といった驚きもあります。また本を開けば各コラム毎にかわいい小物の写真が差し込まれていたり、どのページも見入ってしまいます。
読んで一番感じたことは、由貴さんが子供の頃の気持ちを今でも大切に持ち続けていて、それが幸せの源泉になっているのではないかということでした。大人になるにつれて、子供の時の好きなものを封印してしまったり、なにかの事情で捨ててしまったりする人が多いのではないかと思います。しかし、この本を読むと、由貴さんの幼少期からの「好き」の「直感」を大切にする気持ちが、心の中でずっと生き続けていることがわかります。
小さい頃に行ったお店(「はいから屋」さんなどなど)、その階段裏の佇まい、店員さんのしぐさ、かわいいラッピング、かけてもらった嬉しい言葉、小箱を開いた時のときめき、お小遣いでは買えなくて憧れて見てるだけのもの、そうした小さい出来事の数々が、由貴さんの中でしっかりと記憶され、古い映画を再生するようにノスタルジックな風景が臨場感をもって映し出されていきます。
他にも、夢中になった物語(プロイスラーが書いたものなど)、雑誌(「なかよし」「オリーブ」など)の愛読したコーナー、何回観たか分からいない映画(「シェルブールの雨傘」など)、祖母との思い出、影響を受けてきた人たち、由貴さんというオリジナリティ溢れる人間を形作ってきたものが何であったのかが垣間見れます。また由貴さんの強烈な「好き」の押し出しに魅了されて、読んでいる方も、その本や映画に触れてみたくなります。
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